2025年秋にフランス・パリで開催されるワールド チョコレート マスターズ '24/25「WCM'24/25」と表記)世界大会に向けて、日本代表選手を選出する国内予選エントリーが始まっています。WCM'24/25国内予選からワールドファイナルまでの大会テーマは「Play!(プレイ!)」です。
2024年3月27日(水)、日本洋菓子協会連合会 洋菓子会館にて、WCM'24/25国内予選大会に向けての講習会が行われました。歴代日本代表シェフ3名が、大会テーマ「Play!」をそれぞれに解釈し、作品に仕上げる過程、思考などをじっくり解説しながら実演をしてくださいました!
| 会場の様子 |
▶開会の挨拶
| 一般社団法人 日本洋菓子協会連合会 島田 進 会長 |
▶プレイボックス・ショーピース / WCM’2011代表 植﨑義明シェフ(ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブル)
WCM'24/25の課題のうちの1つ「プレイボックス・ショーピース」を披露したのは、WCM’2011代表の植﨑シェフ。
植﨑シェフ:WCMという大会は、人を惹きつける力を発揮することが重要。7時間の競技中にいかに審査員にアピールできるかがポイントになる。人が集まっているところに、審査員は集まる。完成したピエスが動いたり、視覚的に遊び要素が強かったりするものを表現することが自分のこの講習会での役割ではないかと考えた。作品になる前の「素材としてのチョコレートをどう変化させるか、チョコレートを使ってどう遊んで様々なパーツを表現できるか」という視点でテーマを掘り下げた。
植﨑シェフは、いつも作りたいモノが先にあり、それを表現できる方法を考えていくそうで、今回はパンケーキの上のホイップクリームから、作品作りが始まったとのことでした。アイデアの一つとして披露されたクリーム部分は、溶かしたホワイトチョコレートに転化糖とサラダ油を加えたもの。温度を下げて攪拌することで、ホイッパーに引っかかるくらいの流動性と、固まるまでの時間を遅らせることに見事成功されました。
| ホワイトチョコレートをベースにつくられたホイップクリーム |
植﨑シェフ:転化糖やサラダ油を使っていいかという点には議論が起こるかもしれないが、勝ち切れる作品は決まってOKになると感じている。また、天然色素を使用するというルールにより、二酸化チタンが使えなくなり、白の発色を出すことが難しくなった中、着目したのはカルシウム。この素材は、少し黄色味がかっていますが、ホワイトチョコレートそのものも真っ白ではありません。純白ではない素材から、白さを表現するために思いついたのが、あえて、ホワイトチョコレートにブルームを発生させることでした。
ホワイトチョコレートで作ったお皿やティーポットなどのパーツを水に浸して、あえて水を拭き取らずに放置することで表面を白くさせて、カカオバターに溶かしたカルシウムを噴霧したティーカップセットを作り上げ、中にカカオニブを煮出したドリンクを注いで仕上げられました。
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| 表面のチョコレートを焦がすというタブーとも思える加工を施しパンケーキを表現 |
組み立て時に登場したのは、契約農家さんから届いた苺の段ボール箱。梱包テープをハサミでカットして中から取り出されたのは、フレッシュな完熟苺ではなく、ホワイトチョコで作られた真っ赤な苺でした。冒頭に語られた審査員へのアピール方法のアイデアとして、封を開ける所から審査員に集まってもらい、中から苺を出して飾るところを見せ場にする手法を紹介されました。
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| ホワイトチョコレートで作られた苺 |
▶ペイストリーPlay! / WCM’2005代表 山本 健シェフ(シェラトン都ホテル東京)
続いて、WCM'24/25の課題のうちの1つ「ペイストリーPlay!」をご披露いただいたのは、WCM’2005代表の山本シェフ。
山本シェフ : この作品では、日本という国を世界にアピールすることを考えた。サブテーマは「日本の祭り」。ルールを熟知して、持ち込み可能なものをうまく使う事が競技中の時間短縮にもつながる。今回はブリゼ生地でパイ菓子を作製。フレッシュなペイストリーと記されていると生菓子を表現する選手が多いと思うので、あえて、焼き菓子を選択し、見た目にも楽しい仕上げを意識した。
出場者自国の食材を使用することが求められているテーマという事もあり、ご自身が出場された約20年前の体験談を交えて素材選びのポイントについてのアドバイスがありました。
山本シェフ:代表に選出された当時、日本独特のフレーバーを意識しすぎた試作品では世界に通用しないと感じた出来事があった。ワサビを使ったボンボンショコラを試食してもらった際、フランス人シェフにナイフで自分のボンボンショコラをはじかれた。ほんの少し口にしただけで『こんなものは好まれない』と一蹴されたその時から、奇をてらったものではなく、様々な国の審査員に受け入れられるものを選ぶ必要があると意識を変えたことを覚えている。
今回の『たい焼き』に関しても、お皿にのせて審査員にただ配るのではなく、『たい焼き』を焼くための器具を見せることや、いつの時代からあるお菓子だという事がわかるような表現を追加したらなお、良かったかもしれない。
また、WCMは常に進化を遂げていて、テーマもより世界全体の環境問題などを意識するようなものが選ばれているような気がする。自身が出場した時にはなかった、大勢の観客の前で自分自身や作品について英語でスピーチを行わないといけないという点においても、世界が抱える問題を意識した発言、着眼点が求められていると感じる。これは、日本人が弱いとする分野かもしれないが、美味しいお菓子を作るという事はもちろん、そのお菓子の背景についても消費者に伝えるという事とも似ていて、重要なことなので参加予定のみなさんは、是非、頑張って取り組んでください!
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| 日本の祭りをテーマにしたブリゼ生地のたい焼き |
▶気まぐれボンボンショコラ / WCM’2013/2018代表 垣本 晃宏シェフ(アッサンブラージュ・カキモト)
WCM'24/25の課題のうちの1つ「気まぐれボンボンショコラ」を披露いただいたのは、WCM’2013/2018代表の垣本シェフ。審査員へのアプローチ方法や演出に力を入れることの重要性をお話いただきました。競技中に起こしたアクションが審査員の記憶に残っていると、試食の際にその出来事が思い出され、微量かもしれないが加点されるような気がするとのこと。今回、藁を燃やす工程で炎が上がりましたが、例えばそこで消防車のサイレンを鳴らして審査員を集め、液体(乳製品)を注いで消火するような演出をしても笑いが起きて印象に残るのではないかと提案いただきました。
垣本シェフ:普段、料理も提供している自分が皆さんに与えることのできるヒントは何か?を考えて今回のボンボンショコラを考えた。料理でもよく使う藁を使って、ロースト感を表現することを思いついた。藁を燃やした時の香りをチョコレートに移し、味わいを補強するためにスパイスを使用した。
2層のガナッシュを組み合わせる際に意識しているのは、水分量を変えて口どけのスピードを変えること。味わいの違う複数のガナッシュを同じ固さに仕上げると口の中で混ざってしまい、一つの味に感じられてしまう。周りのシェルのチョコレートも含めてすべての層の口溶けが変わる仕上がりを目指している。
お菓子を作る上で重要だと思っているのは香り。ただ、注意しているのは嗅覚が弱い審査員もいること。誰にでもしっかり感じるものを選ぶことが望ましい。また、ボンボンショコラは多くの選手が既成の型を使用すると思うので、別アプローチで攻めるのも手だと思う。前回大会の田中シェフの独創性が、競技ルールのクラフトマンシップの重要性を加速させたとも言えるが、何らかの素材で手作りの型を考えてみるのも面白いと思う。
| 薪 あえて艶のない表現方法も一つ、そぎ落とされた美しさに価値を感じてもらえる |
垣本シェフがサブテーマに選ばれたのはキャンプ。プレイボックス・ショーピースに展示される作品は、自分であればすべてをキャンプにまつわるもので統一しただろうと語り、その発言を踏まえて司会のバリーカレボージャパン チョコレートアカデミー™センター東京の尾形剛平シェフがコメントされました。
尾形シェフ:世界大会で自分自身を表現する際、世界各国の誰もが知っている遊びや演出を選択すると多くの方の理解が得やすい。味においても同じで、ルールにもある甘さを抑えたボンボンショコラにも繋がる。(=世界共通の甘さの好みを意識する)
これまでボンボンショコラは日持ちをもたせることに意識して糖分を加えることが主流だったが、健康志向の方が世界では増えてきているので、甘さ控えめを意識することで、食べ手への配慮や、審査員が20か国の作品を試食することへの考慮にもつながる。ただ糖分を抑えるだけでなく、感じる甘味度やコントラストを意識する感覚が必要。
▶審査員の視点で
WCM’2005代表であり、WCM日本運営委員会代表を務められる和泉光一シェフ(アステリスク)からは、国際コンクールの審査員の経験を通して、加点される作品についてコメントをいただきました。
和泉シェフ:WCMは世界大会の中でも演出の採点が高い印象。コンセプトが明確で、テーマに沿っていること、またそれを言葉やプレゼンテーションで表現できることが求められる。
加えて、新しい味覚の体験を審査員に提供できたら面白いのではないかと思っている。味覚についてはアロマを意識することがカギになる。甘味を抜きすぎると味に深みが無くなるが、甘すぎるのはもちろんよくない。空気を含ませ、副材料を加えて調和していくイメージ。昔の試食審査では審査員はほんの少し食べるだけだったが現在は違う。優勝するようなアシェットデセールは審査員がついつい一皿全部食べてしまうようなものだと感じている。甘味度を抑える材料を使うより、アロマで甘味を感じさせなくするという表現がふさわしいのかもしれない。
また、作業台の美しさや制限時間を意識しすぎて作業量が少ない出場者も増えてきている。莫大な量の作業を綺麗にこなすことも加点につながると再認識してほしい。
▶最後に
歴代日本代表シェフそれぞれが披露した「Play!」の解釈を、実際に目にして味わえた今講習会。未来の出場選手へのアドバイスも豊富で、挑戦したいと思われた方が増えたのではないかと期待しています。
シェフの皆様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
WCM’24/25国内予選申し込みは2024年7月12日(金)までとなっています。
さぁ次はYour turn to Play! あなたがプレイする番です!






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