RAUパティスリー&チョコレート松下シェフ&高木シェフへインタビュー!後編

2023年6月27日火曜日

WCM21/22 インタビュー

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左:松下裕介シェフ 右:高木幸世シェフ


2023年5月24日、「RAUパティスリー&チョコレート」の新作デセール試食会にお邪魔させていただきました!

「ワールドチョコレートマスターズ’22」(以下「WCM」と表記)の審査委員長団にデュオで選出されたパティシエ松下裕介シェフとショコラティエール高木幸世シェフ。

試食会の後お時間を頂き、特別にインタビューを敢行!お二人のインタビュー後編をご覧ください。

前編はこちら


新作デセール「Asu」:WCM’22のテーマ#TMRW(明日)。高木シェフが自分であればどう表現するかと考え、「歯車」という解釈に辿り着きました。2層構造になっている歯車の下は、パンデミックの影響で錆びたまま動きが止まってしまった世界を、上のグレーは錆びが取れて動き出した歯車をイメージ。カカオバター入りのフランボワーズのソースが、社会が再び動き出す潤滑油を意味しています。(新デセール試食会資料より)



~~トピックス~~ 

🍫#TMRWをコンセプトにした新デセール「Asu」への想い
🍫どうやって自分の価値を出すか?今後のWCMに期待すること

🍫#TMRWをコンセプトにした新デセール「Asu」への想い

―高木シェフが、#TMRWをコンセプトに、チョコレートはそのギア(歯車)を動かす潤滑油である、という考えに辿りついた結果生まれた新デセール「Asu」。お二人は審査員として参加したからこそ「歯車と潤滑油」に辿り着いたのでしょうか?選手として参加していたらどうなっていたと思いますか?

松:審査員で出てなかったら、おそらく思いつかなかったと僕は思います。

高:そうですね。選手だったら私、歯車単体にしていたと思うんです。
まず、選手としてのパッション、審査員としてのパッションも違うんですね。選手なら多分この「変えたい」っていう熱い思いからチョコレート=歯車を思いつくかもしれない。でも、審査員は「変えたいけど、動かせない歯がゆさ」みたいなものがあって。審査委員長として考えた時、私は歯車よりも潤滑油っていう答えだったんですね。

変えたいって思う気持ちは、これからの大会でもっともっと集まっていかないと世の中を動かすのって難しいじゃないですか。1人がやっぱりどれだけ「変えたい、変えたい」と思っても、今までのやり方が刷り込まれている人がいるとどうしても難しい。
審査委員長だからこそ、その歯がゆさを動かしてあげたいと言うとおこがましいんですけど、チョコレートができることってそっちなんじゃないかっていう考え方で。



松:コンテストって規定やルールがあって、時間も限られていて、その中でインパクトを与えないといけないという要素があると思うんで、僕たちがやるよりももっと派手になると思うんです。

高:歯車!!って前面に出すとか(笑)

松:(笑)。そう、例えば細かい歯車がたくさん並んでいるとか、インパクト勝負な部分もあると思うんです。でも我々が作ってるのは、普段の生活の中でちょっとしたときに食べてもらうものなんで、見た目は絶対変わってきますよね。

高:海外だったらキラッキラのパールパウダーを使いそう(笑)。

松:今回竹炭を使ったんですが、ナチュラルな着色を使うっていうWCMのルールに則ったんです。うちではあえて全て開示しているんですね。これは天然です、これは合成ですっていうように。あやふやにすると隠してるみたいだし。「天然じゃないと駄目」って方もいますし、お客様に選べる選択肢をっていう意味で。
合成にしか出せない色もあるんですが、WCMのルールはそれなのに、「Asu」で合成着色を使っては意味が無いので、天然のものを使いました。





🍫どうやって自分の価値を出すか?今後のWCMに期待すること

―WCM’25がまもなく始動します(注:インタビューは新しいテーマ「Play!」が発表される前に実施)。次の大会へ期待すること、どのように変わっていくか、想いをお聞かせください。

松:難しい質問ですね。WCMは他のコンテストと違って「攻めてる」ってよく言われていますよね。新しいものを求め続けてるコンテストだなって思います。パワーがあるグローバルな会社でしか思いつかないような、皆の目標になるようなコンセプトでやってもらえたら。
選手が有名になるため、自分の技術を認めてもらうためっていうコンテストは他にも多くあるけど、それ以外だと、注目されるためには独立してお店を出すしかなかったんですよね。
ただ、WCMの海外の優勝者はお店を持つだけじゃなくコンサルになるなどしてグローバルに活躍されている。優勝ってそれ位の価値があることだと思うんです。

日本のショコラトリーで真面目にやっていても、なかなか自分に価値を出すって難しいんで、WCMってある意味「光」だなと僕は思ってるんです。国内大会も大事なんですけど、世界に名を広められて、新しい技術が求められて、自分の感性を出していいよっていう大会だと思うんです。うまく言えないですけど、変わらずに何かやってほしいなと思います。

高:そういう「攻め」の形で続けてほしいですよね。


大会中の審査の様子

松:前回の#TMRWのテーマがどういう評価を得たのかはわからないですけど、普通のコンセプトに戻そうとせず、尖ったまま突き進んでほしいと。最後に壮大なことをぶつけてしまいましたね(笑)。

高:前回大会も抽象的なテーマでしたよね(WCM’18:フュートロポリス)。今、時代の狭間なのかなってずっと2人(松下シェフと)で話しているんです。
時代が変わろうとしている。でも、変わろうという考えを持ってない人もいますし、変わろうと思ってる人でも色んな考えが交差している。まだそういう狭間の時代なんだろうなと思う。

恐らくそれを超えたら、一気にどんどん変わってくるんだと思うんです。報告会(2022年11月24日に実施:関連記事はこちら)でも言いましたけど、多様性を受け入れるっていう考えがこれから増えていけば、今後もきっとすごい大会になる。「WCM=多様性の宝庫!」っていう大会になるといいですよね。私達も重々感じていますが、なかなか難しいですよね。

松:世の中で求められているテーマも取り入れているんだと思います。特にショコラティエ、パティシエって社会をあまり見ないところがあるんですが、そういうテーマから入ってくる知識もあるんです。

WCM’22のテーマは植物性ではなかったですけど、ルールの中に天然色素が入っていて、二朗さんがアレルゲンフリーの作品(#SHARE)を発信してくれると、ビジネスの展開は本当広がりますし、イメージが変わる良い方法なんですよね。僕たちは「Sachi Takagi」っていう植物性のチョコレートもやっていますが、「ヴィーガン」とは謳っていないんです。
開けてみて綺麗で、食べたら美味しくて、調べたら植物性だったっていう風になってほしいんです。ヴィーガンや植物性って、地味で美味しくなさそうで、健康志向なんでしょ?みたいなイメージを皆さんに持って欲しくなくて、もっと可能性を広げたいって意味でやってたんです。

そういった先を読んで、こんなことが来るだろうということを率先してやっている大会だと思うんで、そういうのは本当に嬉しいことで…偉そうかな?(笑)でもどこかで原点回帰として戻る時もあるんじゃないかな。僕たちは過去を否定してるわけじゃないんで、過去には過去の良さがあって、未来にも未来の良さがあると思う。両方をね、取り入れるのが一番いいと思うんで。どうなってほしいか?「とにかく変わらずにストイックにやってほしいな」と思います。



―最後に

松下シェフ、そして高木シェフ、インタビューをお受けいただき本当にありがとうございました。
お二人だけにフォーカスしたのは今回初めてのことで、今まで報告会や壮行会だけではお聞きできなかったお話が盛りだくさんのインタビューでした。
審査員ならではの視点でお話をお伺いし、世界で戦う日本人がどうあるべきか、WCMが何を求めているかが少し理解できたのではないでしょうか。

特に新デセール「Asu」がどのようにして生まれたのか?とても深いアイディアが詰まっていて、シェフのお気持ちを理解した上で頂くデセールは本当に格別でした。
チョコレートで世の中に何ができるのか?そんな大きなテーマに挑み続ける、松下シェフと高木シェフ。
これからもお二人のご活躍を応援しております!


シェフプロフィール:

シェフパティシエ 松下 裕介 

1984年富山県生まれ。
東京のパティスリーやショコラトリーで修行した後、2014 年、29 歳の時に当時日本にはなかったアシェットデセールをコースで提供するお店 【 Calme Elan 】 を東京にオープンする。2016 年には著者 【 専門店のアシェットデセール】 を出版 。 韓国、台湾 、中国などアジア各国で販売。 2017 年にマレーシアの5つ星ホテルからシェフパティシエのオファーを受け 、 知見を広める為に自店を閉店 。 同年現職のオファーを受け帰国し 、 高木幸世と共に南米や 、 ヨーロッパを旅し 、 それらの経験を RAU のブランドコンセプトや商品開発に生かした 、今までにないお菓子を発信する 。 「 ワールド チョコレート マスターズ 22 」 の審査委員長団にも選出 。

シェフショコラティエール 高木 幸世

1990年兵庫県生まれ 。
パン職人の父の影響で食の世界を志し、17歳の時に東京のフレンチレストランで料理人としてキャリアをスタート。東京のパティスリーやショコラトリーなどで経験を積み、2014年に現在のRAUのシェフパティシエを務める松下裕介のアシェットデセール専門店【Calme Elan】にてオープンからショコラティエとして腕を振るったのち、パリの2つ星レストランでシェフパティシエールとして働く。2018年にRAUのシェフショコラティエールの誘いを受け帰国し、ブランドコンセプトや、ショコラだけでなく商品全般の開発など多岐に渡り活躍する。
2021年12月には自身の名を冠するブランド【Sachi Takagi】をリリース。植物の力を使い”菓子”の分野で表現。完全プランツベースの新しい菓子の形を追い求めて、創作を行っている。アジア人女性初の「ワールド チョコレート マスターズ22」の審査委員長団に選出。

SHOP INFO:

RAU Patisserie & Chocolate 

〒600-8022京都府京都市下京区河原町通四条下ル2丁目稲荷町318番6 GOOD NATURE STATION 1F/3F
1F TOGO/営業時間10:00~19:00
3F EAT IN/営業時間11:00~19:00(18:30L.O.)
電話075-352-3724 (3F)
定休日:施設に準ずる

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