WCM'22 再現講習会&トークショーが行われました!

2023年8月25日金曜日

WCM21/22 イベント・講習会

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2022年10月にフランス・パリで開催されたワールド チョコレート マスターズ2022(以下「WCM'22」と表記)世界大会にて、日本代表として闘った田中二朗シェフ(カルヴァ)。

2023年7月25日(火)、27日(木)の2日間、東京(ドーバー洋酒貿易株式会社様本社)と大阪(同社関西支店)の2会場にて、田中シェフによる課題作品の再現講習会を開催いたしました。

東京会場は70名、大阪会場は50名以上もの方にご参加いただき、大盛況となりました!

また、両会場にてWCM歴代代表シェフもご登壇され、世界大会の舞台裏、「WCM'22大会テーマ「#TMRW」の解釈や作品に対する想い、次大会テーマ「Play!」の解釈などについてお話をお伺いすることができました。



東京会場の様子

▶開会の挨拶


東京会場:一般社団法人 日本洋菓子協会連合会 島田 進 会長

大阪会場:協同組合 全日本洋菓子工業会 小澤 俊文 理事長

▶オープニング

WCM'22全7つの課題のうちの1つであった「#YOU(プレゼンテーション)」の大会時の映像の視聴とあわせて、田中シェフよりWCM'22の出場を志したきっかけや大会を通して伝えたかったことについてお話しいただきました。


田中シェフ: #TMRW=明日、チョコレートに何ができるのか」という問いかけと捉え、パティシエとしての社会貢献は何ができるのかという想いを持ち、今回WCM'22に参加した。
"DELIGANT(デリガント:デリシャス+エレガントの造語)"という独自のコンセプトをもとに考えたお菓子を提案。SDG’s=誰一人取り残さない社会というテーマをお菓子の世界に取り入れ、誰もが美味しく食べられる菓子作りに挑んでいる。

▶デモンストレーション

田中シェフとチョコレートアカデミー東京責任者 尾形剛平シェフの解説とともに、全7つの課題の内、田中シェフが部門賞を獲得された「#SHARE」「#TASTE」「#BONBON」の3つのデモンストレーションが行われました。

👉デリガントと7つの課題の詳細についてはこちら

#SHARE(シェアするデザート)



「#SHARE」では アレルゲンフリーのアイスを提案。ナッツやサブレなしで食感を楽しんでもらうためにポップコーンを採用。世界各国でアレルギー食材に指定されることが少ないフランボワーズをソースに選んだ。自ら考案した「ベジタブルパウダー」などの食材の説明をPOPにまとめ、手を止めて説明せずとも審査員に読んでもらえるようにするなどアピール方法も考えた。

#TASTE(フレッシュパティスリー)



「#TASTE」で評価されたのは軽さ。審査員へ提供する順番(9人中9番目)を考慮し、チョコレートの味を残しながらも軽くさせ、その上で栄養満点の柚子をどう使うかを考えた。大会中は生の柚子を並べ、海外の審査員に実際に柚子を手にしてもらうなど見せ方にも工夫をした。


#BONBON(ボンボンショコラ)



「#BONBON」では18カ国中唯一チョコレート型ではなくオリジナルの器具を使用し、一人ひとり個性があって良いように個体差のあるチョコレートを考案。見せ場は自分から審査員を呼びに行ってアピールし、その革新的な方法が評価に繋がった。また、サステナビリティ審査員の存在も意識し、ゴミの処理ひとつにも気を遣った。

▶トークショー

デモンストレーションの後で、田中シェフとWCM歴代日本代表シェフによるトークショーが行われました。WCM日本運営委員会代表 アステリスク 和泉光一シェフ(両会場ご参加)、シェラトン都ホテル東京 山本健シェフ(WCM'05年代表・東京会場のみご参加)、ラヴニュー 平井茂雄シェフ(WCM'09年代表・大阪会場のみご参加)にご登壇いただきました。


①大会テーマ#TMRWを通して感じられたもの、得られたものを教えてください。

田中シェフ:パティシエ人生25年になるが、大会のテーマを解釈して今回の自らの大会コンセプトとした「デリガント」がパティシエとしての使命である、ということに気づかせてもらえるコンクールになった。昨年末にお店もリニューアルし、この「デリガント」を推し進めている。

山本シェフ:田中シェフは国内大会の時点で、ただ1位を狙っているのではなく自分の表現したいものが決まっているという印象を受けた。
私自身もホテル勤務の為、アレルギーがある人だけ違うものが出てくるのではなく、家族全員で同じものを食べてもらい、全員でおいしいと共有できることが僕らの仕事の根本であると考えており、共感するところがあった。



シェラトン都ホテル東京 山本 健シェフ(WCM'05 代表)

②モナリザの3Dプリンタで作成するデザインの課題に関して感じられたことを教えてください。

田中シェフ:チョコレートを3Dプリンタで作れることは素晴らしいが、解決しなければならないのは厚さの部分。口に入れたときに違和感がないよう、まだまだ改善が必要。シェルとして、保形性・利便性が高いため、非常に有効的なアイテムであり、家に持ち帰ってから電子レンジで溶かして食べる、という風にも活用できるのではないかと可能性を感じた。

和泉シェフ:大会前から触れる機会は多かったが、まだ食べられるというレベルまでには到達していない。形は面白いものを作れるので、ピエスモンテに対しても今後できなかったような中抜きのパーツなど、3Dプリンタが普及すれば飛躍的に見せ方が変わってくると思う。



WCM日本運営委員会代表 アステリスク 和泉 光一 シェフ(WCM'05 日本代表)

③Or Noir ™について

👉オリジナルチョコレート「Or Noir ™」についてはこちら

平井シェフ:「オールノワール CREATION SHIGEO HIRAI」について
お店の味として、全てのチョコレートのアイテムの基礎に使用できるよう、汎用性が高く、多くの方に美味しいと感じてもらえるオールマイティな味を目指した。
お店をオープンして11年経った今であれば、また違うものを作るのではないかなと感じている。自分の置かれたタイミングや状況によってレシピを変えられるのが オールノワールの良いところだと思う。

田中シェフ:「オールノワール Deligant」について
アレルゲンフリーのお菓子を作る際にナッツは使えないので、 ガーナをベースにナッティ感のあるエクアドルを加えることでナッツの風味を少しでも表現できるように配合した。
お店を経営する上で、一部の商品にしか使えないチョコレートにしてしまうと、お店のカラーが出にくくなる。全てのお菓子に使いやすい、個性が強すぎないチョコレートにした。



ラヴニュー 平井 茂雄 シェフ(WCM'09 日本代表)


④次大会テーマ「Play」の解釈と出場者に求める資質、アドバイス

和泉シェフ:自分が行なっている作業、日常の生きている世界、思考を巡らせた瞬間、自分が動いている瞬間が全て「Play!」になる、可能性が多くあるテーマ。そこにどのようにチョコレートを結び付けていくか。日本人は、複雑なルールが出た時に噛み砕いて作品に落とし込むのが弱いと感じている。考える力=人間力を磨き、ただチョコレートを使った作品を作るのではなく、主題の「Play!」と自身のテーマも持って、審査員を押し込んでいってほしい。WCMは個性を大事にしており、歴代シェフはそれをサポートする。是非WCMに参加して、次の大会の講習会ではこちら(歴代シェフ)側に僕たちと一緒に並んでほしい。

田中シェフ:「Play!」が個人のことなのか、全体のことなのか。僕が考える「Play!」は自己表現。大会中は率先してコミュニケーションを取るようにしていた。技術を競うだけでなく、自分の哲学を発信できる場所であるべきなので、自分の哲学を突出して表現できるようなシェフが出てくることを願っている。大会を通して出会う人たちというのは宝物で、自分がした行動で自分の人生が変わる。自身の人生を豊かにしてほしい。

山本シェフ:田中シェフのように「何を提示したいのか」を強く持っていたほうが、より一貫性のあるものが作れる。その中で、どれだけ遊び心が引き出せるかが求められているのではないか。

平井シェフ:チャレンジする、行動に移すなど、「Play!」するということには「楽しむ」という要素があるので、見た時に心が動かされる作品であることが重要。身近なことに対して感動することが大事だと考えている。国際大会の場合、自分の見せ場を作ることが重要。技術はもちろんのこと、自分の役作りをして、周りの人を引き込む魅力も大事にしてほしい。WCMに挑戦してくれる人が増えてほしい。現在、24年の国内予選に向けてルールを作り始めている段階。WCMに参加する事で、見える世界がまた変わると思うので、自分の可能性を広げるために参加していただければ嬉しい。

尾形シェフ:コロナ禍で大会がなかなか開催できず、難しい三年間であった。「Play!」には、楽しむ、遊ぶ、演じるなどいろいろな意味があるが、バリーカレボー社からのメッセージとして、次の大会には、チョコレートの業界をマスターして、そこで「Play!」できる、チョコレートの業界を盛り上げていただけるような方に参加していただきたい。

▶受講された方からのコメント


スイーツジャーナリスト 平岩理緒 様

コンクールの講習会ではピエスモンテの実演などが多い中、田中シェフが賞を取られた味覚の部分に講習内容が絞られていて、シェフの目指していたものがすごくわかりやすかったです。WCMは製菓コンクールの中でも少し特殊で、技術だけでなくシェフの持つ哲学が問われる大会だったため、今日はその内容をたくさん聞くことができ、密度の濃い時間でした。



WCM'22 ベルギー代表 松田詢吾シェフ

味覚部門で賞を取られており、どういうものが世界で評価を受けるのかを確かめたかった。ベルギー代表として出場し、他の出場者を見る余裕がなかったため講習会に参加しました。
「#BONBON」では大会協賛企業のモールドをあえて使わない大胆さ、「#TASTE」ではチョコレートが主体というルールの中で、軽さや絶妙な味のバランスが印象に残りました。

▶最後に

田中シェフの熱い思い、作品ができるまでのお話、大会裏話など内容が濃く盛りだくさんの講習会でした。
歴代シェフの皆様からは未来の出場選手へのアドバイスも頂きました。
実際に講習会に参加された方々は次大会への参加を考えられているシェフも多く、シェフの作業やトークに聞き入り、真剣な眼差しでメモを取っておられました。講習会後には田中シェフと直接お話をされたい方の長蛇の列ができ、時折シェフのお話を聞いて涙ぐむ方がいらっしゃったのも印象的でした。
また、2023年10月30日(月)~11/1日(水)に開催されるジャパン・ケーキショー東京では、「#WOW(チョコレートのピエスモンテ)」の展示と、シェフによるトークショーも予定されておりますのでお楽しみに!
既に2025年大会のテーマも発表され、事務局も少しずつ動き出しております。皆様の次大会への挑戦をお待ちしています!

シェフの皆様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!






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