2022 年 11 月 24 日に行われた WCM'22 報告会の前日、シェフのお店にてインタビュー!WCM のお話はもちろん、シェフのオールノワール™(オリジナルチョコレート)や、お菓子に対するこだわりも聞かせて頂きました。
~~トピックス~~
🍫WCM’22 を振り返って🍫オールノワール™ オリジナルチョコレート「COMMENCEMENT(コモンスモン)」
🍫大人気のクリスマスケーキは 10 分で完売!シェフのこだわりとは?
🍫WCM’22 を振り返って
― WCM‘22 の結果は下記の通りでした。日本から大会を御覧になり、どのような印象を受けましたか?
僕が出場した頃、2011年当時のWCMはまだまだ個人の力比べの世界がありましたが、WCMに限らず世界大会で個人の力量だけで勝つのはもう難しいだろうなと思いました。昔であれば、原型を作ってシリコン型を取って、チョコレートを流してっていうのを一連の作業として一人でやっていましたけど。今は原型を作るいわゆる彫刻家がいて、それでシリコンで型を取るプロがいて、そこにチョコレートを流し込むのが自分。
小野林くんの頃(注:小野林範シェフ 2015年準優勝)からそういう傾向はあったじゃないですか。小野林くんの時は、ピエスモンテの女性の型のシリコンはアメリカで作ってもらったんです。山本さん(注:クラブハリエ 代表取締役社長兼グランシェフ 山本 隆夫氏)は洞察力、観察力というか先見の明があるので、ハリエは早いですよね。商売にものすごく長けてる方じゃないですか。だから嗅覚が凄いんですよね。
大会に出て日本で優勝を目指そうっていうスタンスなのであれば、レストランデセール、建築家、デザイナーといった、その分野に長けた人を入れて感性・知識・経験値をいかしていかないと、パティシエとメーカー側だけの集まりだけでは厳しいと思います。パティシエってどうしても、自分で作り上げないと納得しない部分がある。デザインも、横から茶々を入れられると「俺には俺のコンセプト、考えがあるんだ」ってなりやすいんですけどね。
― #WOW(ショップウィンドウのチョコレートディスプレイ)について
例えば「高さ3mの空間をディスプレイする」っていう考え方を持たないといけないんだと思います。特にスペインは凄かったじゃないですか。象もクレーンで吊り下げて置いたんでしょ?ギリシャの作品の男の子も、オブジェとして完成されてるじゃないですか。
松田くん(注:ベルギー代表 松田シェフ、#WOWで2位を獲得)はクジラを壁に貼り付けて、その壁にもしっぽのシルエットが組み込まれていたし、魚が動いてたっていうのも大きかったんでしょうね。
― 部門賞の結果は下記の通り。フランスの部門賞は#TRANSFORMのみでしたが総合結果は2位でした。
世界大会で勝つためには、平均的に良い点を取ることが大事なんですよ。全部1位じゃなくて全部2位を目指せば必ずトップ3に入れますから。彼(日本代表の二朗シェフ)は今回の結果をうまく消化して今後に生かしていくんじゃないでしょうか。
🍫オールノワール™ オリジナルチョコレート「COMMENCEMENT(コモンスモン)」
― 2021年末、パリ郊外にあるオールノワール™ラボとの2回のオンラインセッションを経て、オリジナルチョコレート「COMMENCEMENT(フランス語で”始まり”の意味)」を作られました。どのようなコンセプトで作られましたか?
オールノワール™:WCMの主催者である世界最大のチョコレートメーカー、バリーカレボーグループの主要ブランド「カカオバリー」が提供する、世界に一つだけのオリジナルチョコレート。詳しくはこちら
僕は元々、オールノワール™は加工に使うのではなくそのまま食べるチョコレートという感覚で、「今までにないミルクチョコレートを作りたい」っていうところから発想しました。今もほとんど加工してないですよ。ナポリタン(スクエアタブレット)と、お店の外の自動販売機で販売している、クッキーと混ぜ込んだチョコレート「ランパール」の新しいラインナップとしてコモンスモンを使っています。あくまでもチョコレート単独で食べてもらうイメージです。
ムースや焼き菓子といったオールマイティに使えるチョコレートって、各メーカーが何十種類もチョコレートを持っていてパーセンテージも細かくある中で、わざわざ自分がカカオマスから何から選定して味わいを見て作らなくても、既存品に何かをプラスすれば作れちゃうと思うんです。でもタブレットやナポリタンの場合、コンチングマシンがあって、きちんと精製されたチョコレートじゃなければいけないんで、個人で加工できるものではないんですよね。
味については、「ミルク」って呼べる限界ギリギリのハイカカオミルクチョコレートにしたいなと思っていて、そこまで細かいプランがあった訳ではなく進めていきながら決めました。
ただ、ミルク特有の塩味というか、粉乳をたっぷり足してちょっと焦げたようなビスケット臭は出したくなかったんです。ビスケットなら代用品がいくらでもあるなと。だから、ミルク感を感じるけれどもカカオ感もしっかりあるものにしたかった。食べた最初の瞬間は完全にノワールで、そこからカカオ感が無くなっていく間に少しミルキーさが出てくる…そういうイメージで最終的に調整させてもらいました。
🍫大人気のクリスマスケーキは10分で完売!シェフのこだわりとは?
― 11/18の予約開始から1週間も経たない内にクリスマスケーキがほぼ「SOLD OUT」になっていて驚きました。
うち、早いんですよ。納得したものを出したいんです。数を作ろうと思えば簡単な話なんですけど、そこに妥協をしたくない。例えばうちで総数1500台位販売するんですが、それを3000台に増やすことも可能なんです。
ただ、何か月も前にジェノワーズを焼いて冷凍しておくとか、ムースを仕込むとか。冷凍した瞬間に賞味期限が延びるのか?って話なんですよ。僕は絶対嫌で、賞味期限内できちんと使い切ることを考えると、作れる台数には限界があるんです。お客様からしたら「なんだよ、もう予約とれないのかよ」って思うかもしれないですけどね。
― WCM2011で準優勝を獲得したアントルメを再現した「エターナル」、限定数5台に震えました(笑)
これは、予約が始まって10分くらいでなくなりました。この台数はプレミア感を出すっていうのもあるんですが、WCMの時と同じように食べていただきたいので、前日に仕込むんです。
出典:https://www.instagram.com/p/Ck-hS1PSzW8/?utm_source=ig_web_copy_link
WCM2011当時のアントルメショコラ
WCMって一日でアントルメを全部作るじゃないですか。なので、それに合わせてゼラチンの量・カカオ分・糖分を調整するんです。ゼラチンの力が本当に発揮されるのって、8時間後くらいなんですね。大会の競技と同じように、6~7時間後にゼラチンがきいた状態で食べてもらおうとすると、ゼラチンの量が多いんですよ。なので、翌日食べちゃうともう硬いって感覚になっちゃう。変えようと思えば変えられるんですけど、それを一切変えないっていうのがうちのこだわり。だから日常的にはお店でやらない。やれないんですよ。
なので正直、クリスマス直前に何十台も仕込めないんです。だから5台が限界だよね、9層作るわけですから。前もって仕込んでおいてその日に組み立てる、ではなくて、やっぱりWCM当時のアントルメをそのまま食べて頂きたいんです。
― インタビューを終えて…
植﨑シェフ、お忙しいところお話をお聞かせいただきましてありがとうございました!
インタビュー当日は、冬らしい寒さとあいにくの雨模様でしたが、それでもお客様の列は途絶えません。シェフの「納得したものを出したい」「美味しいものだけを届けたい」という熱い想いがチョコレートやケーキに反映され、お客様を惹きつけていることを強く感じました。
また、シェフのWCMに対する冷静かつ客観的なご意見は、これからWCMチームジャパンにとって大きな力になると確信したインタビューでした。
これからのますますのご活躍をお祈りしております。